■利用客増・収入増に向けた取組み
コロナ禍により、2年間で280億円の減収が見込まれる市バス・地下鉄事業において、利用客の回復は喫緊の課題です。
とくに、テレワークの浸透などにより、コロナ後でも、15パーセント程度の減少が想定される定期券利用者の増加、回復が課題となる中で、昨年の9月市会では、定期券利用者が利用できるサブスクリプション型サービスについて紹介・提案したところでしたが、来年度には試行実施されることが示されました。
9月市会では、最初に取り組まれた東急グループのサービスを紹介していましたが、JR東日本においても同趣旨のサービスが提供され、駅のコーヒーショップにて実施されたサブスク(定期券購入者が月2,500円で1日3杯までコーヒーを購入可能)では、利用者が月平均27.7杯もコーヒーを購入したことが明らかになりました。定期券で通勤することが想定される平日の日数より購入杯数が多いことから、このサービスが定期券利用者にとって、かなり魅力的であることはもとより、休日まで駅に足を運ぶような行動変化が起こったことまで考えられます。
先行事例に鑑みれば、定期券利用者を対象としたサブスクは有意義なものと思われますが、公営交通事業者が提供するには課題もあります。先に紹介したコーヒーショップは、JR東日本の子会社が運営する店舗であり、民間事業者ならではのサービス展開が前提にあることです。
来年度は、成功事例を示しながら、駅ナカビジネスの事業者との連携を念頭に試行実施を目指すということであり、魅力的なサービスが提供できるよう期待します。
サブスクサービスの実施において肝になる駅ナカビジネスですが、新たな展開を目指さなければなりません。今ある駅ナカスペースは一定飽和状態であり、現状では大幅な広がりは期待出来ません。
しかしながら、コロナ禍やデジタル化により、近年、ビジネスモデルは大きく変容しています。デジタル化により、人件費の削減や省スペース化が可能になり、これまで収益の見込めなかった乗降客数2万人以下の駅においても、ビジネスチャンスが期待できるはずです。
新たな駅ナカビジネスの展望を求めて、ベンチャー企業やスタートアップをはじめ、民間事業者から、コンペ方式なども検討しながら、広くアイデアを募ることが必要です。
JR東日本では、「Beyond Station構想」を掲げ、駅が、電車に乗り降りするためだけでなく、人が来てくれるよう魅力を上げていくことを目指しており、サブスクもその一環です。地下鉄駅も地域の要として、利用者や周辺住民に貢献できる場所になるよう、今後も駅ナカの発展を求めていきます。